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風が強く吹いています。
 もう2ヶ月もすればお正月。おせちを食べて、コタツに入りミカンを食べながら、正月の無駄に賑やかな特番を眺める。キラキラギラギラガヤガヤ。正直うざい。うるさい。煩わしい。そんな時は箱根駅伝。風を切り、ただ一点を見据え、ひたむきにゴールを目指す選手達を見ているだけで、泣けてくる。自分の正月ボケしきった体たらくは置いといて。テレビ画面には決して映ることのないその努力、責任、信頼、そんなものの10分の1、100分の1も理解はできないけれど。それでも、高校でボールしか蹴っていなかった自分には、まったく分からない、経験したことのない感覚や感情ではない。

 この前Mさんにオススメしてもらった『格闘する者に○(マル)』を買いに行ったついでに買っておいた、三浦しをんの『風が強く吹いている』を読む。今年読んだ本の中でダントツに面白かった。通常の文庫本の2倍の分厚さに尻込みしていたけれど、読み始めると、ページをめくる度に少なくなっていく残りのページを見て、終わらなければいいのにと何度も思った。
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 ストーリーは、都内にあるボロアパートに住む10人が紆余曲折を経ながら、それぞれの過去と未来と今に懸命に向き合いながら、箱根駅伝を目指す青春小説。はじめは自分も『この設定ってどうなんだろう?』と思っていたけれど、陸上関係者や陸上競技経験者が読むと、首を傾げたくなる部分も多いのだろうけど、そんなことはどうでもよくなる。力強く、腕を振り大地を蹴り上げ、向かい風の中ぐいぐいと突き進む登場人物達と同じように、圧倒的な疾走感で最後のページまで辿り着いた。サッカーがパスを繋いでゴールを奪うように、野球がヒットを繋げて得点をあげるように、汗が染み込み少し重くなった襷を繋ぎゴールを目指す。繋ぐことで繋がるもの。勝利や結果だけではない、譲れないもの。夏の甲子園や、冬の国立、正月の箱根路が、何よりも人々を惹きつけ、僕らの心を揺さぶるのは、二度と戻ることの出来ない、一瞬の風の中でしか生きられない、光のような姿を見せてくれるからなんだと思う。
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by monday_panda | 2010-10-31 18:18 | book | Comments(4)
空きっ腹にバナナ。
昨日、柏の方まで球蹴りにゆく。お昼前には電車に乗り込み、ガタンゴトンと東京を横切り千葉県を目指す。めずらしく長い時間電車に乗るので、先日から読み始めていた、よしもとばななの『人生の旅をゆく』を読み進める。ここのところ、エッセイやノンフィクションものばかりを読んでいる。なぜか最近、小説や長〜い読み物は読む前に『ヨシっ!』と気合いをいれないと読めなくなっている。まさか、これは、老いなのか?

よしもとばななといえば『キッチン』。『TSUGUMI』や『アムリタ』『不倫と南米』『ハードボイルド/ハードラック』などたくさん著書がある。好き嫌いは別にして、文学少年ではなかった自分にとって、とても読みやすい作家のひとりだと思っている。ただ、何冊かしか読んだことはないけれど、どれも一様に似たような印象を受けるものばかりなのだ。もちろん同じ人間が書いたものなのだから、どこかしら重なる部分はあって当然なのだが。薄曇りの空の向こうに、まっ白な太陽がぼんやりと見えるような、暗闇の中でひそひそと何かの声が聞こえてくるような、すくってもすくってもサラサラと流れていくような、肩すかしをくらったような読み心地。たまたま自分が手にしてきた作品が、そうだっただけなのかも知れないけれど。
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ただ、今回の『人生の旅をゆく』は違った。東京で、日本で生活することのしがらみや世知辛さが、丁寧にじっくりと生きることの難しさや大切さが、著者の視点から深くやさしく描かれている。エッセイということもあり、小説では感じることの出来ない著者の心のずっと奥の方の部分が、ダイレクトに届いてくる。生々しい、リアルな、生きた言葉が一冊に、一節に、一言に詰まっている気がする。その言葉があの文体で書かれているものだから、すんなりと頭ん中に入ってくるのだ。丁寧に生きたい。読み終えて、ただただそう思った。柏駅に到着した時には、もう一度最初から読み返していたのだった。

空きっ腹にはバナナ。どうやら、空っぽの頭と心にも栄養満点の"ばなな"はいいらしい。
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by monday_panda | 2010-09-27 17:16 | book | Comments(2)
格闘する活動の葛藤。
 そろそろこの薄暗い六畳間から出ねばならぬ。

 窓の外にのびる小さな商店街を、カツカツと忙しなく会社へ向かう企業戦士の足音でムクリと目覚める。少しずつではあるが秋の気配が朝夕に漂い始めた。ここのところ日がなパソコンの前で、自分の進むべき将来をカチカチと検索し思案し途方にくれている。先週、気になった一社にエントリーし、今日は書きかけだった履歴書にフレッシュとは言いがたい証明写真をペタリと貼付け、志望動機の欄でペンが止まる。なんだか何を書いても嘘っぱちに思えてくる。デザイナーとして成長したいと思います。自分の能力を発揮したいと思います。御社のチカラになりたいと考えております。うんぬんかんぬん。窓の外を行く社会人の諸君は何と書いて内定を勝ち取ったのか、教えてほしいものだ。
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 履歴書と作品のポートフォリオを封筒に入れ、ペタペタとサンダルをつっかけ郵便局へ向かう。おねぇさんに封筒を渡し390円を払う。郵送料で牛丼一杯食えるぜ、とここんところ節約大魔王になりつつある思考回路にガクリと凹む。とりあえずパンパンっ!と心の中で手を合わしておく。どうか書類選考で落ちませんようにと。

 アパートに戻り少し遅い朝飯をかき込んで、フォトグラファーのMさんに勧めてもらった三浦しをんの『格闘する者に○(まる)』をペラペラと読みはじめる。女子大生の可南子が、呑気な友人達に囲まれ、過酷な就職戦線の上で、ワケありの家族の中で、歳の離れた恋人との間で、格闘する日々を描いた青春小説である。
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 これが面白かった。のっけからぐいぐいと可南子の思考の渦の中へ引き込まれ、彼女と同じ目線で、次から次へと立ちはだかる世間の荒波に、毒づいては打ちのめされ、殴り掛かっては弾き飛ばされる。チクショー!バカヤロー!と大声で叫ぶ。もちろん心の中で。それでもおかまいなしに、大なり小なり波は打ち寄せザワザワ、ゴゴゴ〜と日々は続いてゆくのだ。学生の頃の苦い就活体験を思い出しもするし、現状と重なる部分もあったりで、知らず知らずのうちに登場人物の中のひとりになっていた。の〜んびりと読み続け、最後の一文を読み終えた時には3時を回っていた。兎にも角にも格闘せねば!と、ハローワークに行こうと外に出ると、灰色の雲がモリモリと空を覆いパラパラと雨が降り始めた。遠くの空は青空が広がっているというのに。そうだ、そろそろあの青い空の下へ、格闘しながら毒づきながらマイペースで行かねばならぬ。
 
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by monday_panda | 2010-09-15 03:46 | book | Comments(8)
ノーモアワー。
毎年8月になると決まってテレビでは、戦争のドキュメンタリー番組や、スペシャルドラマなんかが放送される。テレビを見るでもなく、つけっ放しにした画面からは、悲惨な正面から受け止めることのできないような、映像や音が流れてくる。そんなものの影響なのか、たまたまなのか、最近、戦争を題材に書かれた本を立て続けに2冊読破。
ひとつは石野径一郎の『ひめゆりの塔』、もう一冊は近藤二郎の『コルチャック先生』。沖縄とポーランド、舞台は違うけれどどちらも第二次世界大戦を描いたもの。
『ひめゆりの塔』はドラマ化されたり、映画化されたりとタイトルは知ってはいたけれど、内容はなんとなぁ〜くしか知らなかったこともあり、テレビで見た、記憶の曖昧な映像の断片を文章に重ね合わせながら、読み進める。太平洋戦争で全てを奪い尽くされた沖縄。生きる意味や生きる喜びを見いだすこともできない戦争を目の前に叩き付けられ、地獄としか言いようのない日常の中で、姫百合部隊の少女達の、泥にまみれ、雨に濡れ、砲弾に怯え、戦争にすべてを塗り潰された姿が描かれている。ただ生きているから生きる、そんな姿が。
『コルチャック先生』は、医者、作家、教育者などの肩書きを持つポーランドのユダヤ人、ヤヌシュ・コルチャックが、第二次世界大戦中、ナチスのユダヤ人大虐殺の犠牲になりこの世を去るまでの生涯を描いたもの。軍医としていくつもの戦争を経験し、作家としてエッセイ、童話など、たくさんの作品を残し、教育者として2つ孤児院を設立し、子供達を愛し、共に生き200人の子供達とともにトレブリンカの収容所へ消えていった。いくつもの戦争に翻弄され、打ちのめされても、最後まで戦争というものに屈しなかった、理想と信念を持った人間の、なにものにも背を向けない頑固なまでの強さに打ちのめされた一冊だった。
目次の中に『ひめゆりの塔』は『死の行進』、『コルチャック先生』には『死への行進』という項目がある。本来、行進の意味は、士気を高めたり何かの意気を強調したりするために、おおぜいが隊列を整えて、進んでゆくことなのに。辿り着く先にあるのが死なんて。

『一日を満足に生きることは、一冊の本を書くより難しい』
という一文にドキッとした。

日本は唯一の被爆国。第二次世界大戦においての敗戦国。そこばかりがクローズアップされて、小学校の頃から受け続けた授業の中でも、なんとなく日本はかわいそう、日本は悪くないみたいな感覚があるけど、そもそも戦争に勝者、敗者なんてものはなくて、人間が人間に負けた結果、生まれたものが戦争なんじゃないんだろうか?戦争を経験していないということは、幸せなことなんだろうけど、経験していないものを語る時、人はとても無力だ。ただそれでも語ろうとする時、無知であることを認識していなければならない。と思う。語るよりもまずはひとつでも多くを知らなければ。
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by monday_panda | 2008-09-09 23:45 | book | Comments(0)
言葉と画と匂い。
いつもより早く会社を出る。地下鉄に下りる階段をスルーして、フラっと本屋へ。
まだ、お盆休みの人も多いせいか、普段の中央通りより人の数は少ない。

気になる写真集や雑誌をひと通り立ち読みして、マンガのコーナーへ。
白いカバーに綺麗な赤い文字が映える本が目に飛び込んでくる。
『キャンディーの色は赤。』魚喃キリコ(ナナナンキリコ)の久しぶりの新刊が
平積みされている。迷うことなく手にとり、レジに並び、即購入。

初めて、魚喃キリコの漫画を目にしたのは浪人してた頃。『南瓜とマヨネーズ』。
ただ、カバーに描かれた女の人の絵に惹かれて、内容も見ないまま買ってみたけど、
そのひとコマでイラストレーションとして成り立つ、綺麗な線のシンプルな絵に、
詩集を読んでいるような、生々しい言葉に、淡々と語られ、流れる空気感に、
あっというまに引き込まれてしまったのを覚えている。

彼女の作品の多くは、若い女と男の恋愛が描かれている。主に女性目線で。
少女マンガのように、目がキラキラした美男美女が織りなす、やたら爽やかな
恋愛ものではなくて、けっこう重い。読み終わって凹んだりもする。
それくらいリアル。などこにでもありそうな普通の恋愛のお話。の数々。
女の人じゃない自分には、理解できない心理描写なんかも多々あるけど。

ねじまがってザラザラした乾ききった感情。
ドロドロに熟して溶けてしまいそうな甘い感情。
頼りなくどこかで途切れそうな真直ぐな感情。
自分でも掬いあげることができなかった可哀想な感情。

きっとどれも間違いじゃないんだと、気づかせてもらえるような気がする。
読むたびに、なんとなぁ〜くそんなことを思ったりする。そんな作品。

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by monday_panda | 2007-08-17 21:26 | book | Comments(2)



イラストレーター栄元太郎のブログ。イラストや写真や言葉。溜まったものを、ぽこぽことアウトプット。
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