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踊る光と歌う影の町。その1
ワールドカップも終わって何もすることがなくなった。そろそろ潮時。こんなぼんやりとした府抜けた生活も。

会社を辞めてから極端に電車に乗る機会が減り、めっきり本を読むことが少なくなった。一番の読書スポットが電車の中だったというせいもある。最近はすっかり自転車生活。それでも最近読んだ2冊に沢木耕太郎の『「愛」という言葉を口にできなかった二人のために』と角田光代の『いつも旅のなか』がある。まったく興味もない、思い入れもないキューバに行ってみてもいいかなと思ったのはこの2冊のせい。せいというよりも、おかげか。「愛」という〜の中の『彼らの旅』ではキューバの英雄チェ・ゲバラのことが語られており、いつも〜の中の『いのちの光』では、著者のキューバの旅が綴られていた。人は偶然を運命だと勘違いすることが得意だ。偶然を必然だと思い込むことで、ある種の魔法を自分にかけてみたりする。せっかくかけたその魔法が解けて、熱が冷めてしまわないうちにさっさと大嫌いな飛行機に乗ってキューバに行くことにした。
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ここではないどこかへ行きたいという欲求は、おそらくあまり強い方ではないと思う。国内も海外も。機会があれば、誘われれば、その程度だ。言葉が通じない、面倒くさい、遠い、家がいい、理由という名の口実をあげれば切りがない。ひとりが好きなくせに、とことん一人なのはどうやら苦手なようなのだ。一人で過ごす時間がやたらと増えたここ最近、そんなことに気がついた。
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キューバは遠い。想像以上に遠い。成田→ヒューストン→カンクン→ハバナ。往路はトランジットも含め20時間以上の移動。ホセ・マルティ国際空港に到着した時、すでにあたりは真っ暗。空港からホテルへ向かうタクシーから見える景色は、ぽつぽつと寂しく灯る街灯の光と薄暗い路地ばかり。第一印象は不合格。必要以上に不安になってしまう。ホテルに着いた頃には時計の針は午前零時を回っていた。といっても、もう時間の感覚もあやふや。丸一日、慣れない英語とスペイン語にもみくちゃにされ、頭もボーっとする。どれどれとガイドブックを開いたまま、知らぬまにカエルが潰れたような格好でスコンと眠りに落ちていた。
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時差ボケというほど酷くもなく、朝になるとしっかり目が覚めた。ホテルのレストランで、大勢の欧米人に混ざって海外らしい朝食をとる。特に予定も見たいものも決めていないけれど、まずは海を見よう。と通りの先に見える水平線を目指す。海岸づたいにのびるマレコン通りに出る。海と空をスパッと二つに分けている水平線は今まで見たどれよりも力強い。ブロロン、ブロンとボロボロのアメ車が勢いよく突っ走り、観光客も地元の人も防波堤に腰かけただ海を眺めている。遠くに来たなぁ、そんなことを思いながら、その先に広がる旧市街に向かってペタンペタンと歩きはじめる。
 
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by monday_panda | 2010-08-03 23:00 | daily | Comments(0)
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イラストレーター栄元太郎のブログ。イラストや写真や言葉。溜まったものを、ぽこぽことアウトプット。
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