Top
踊る光と歌う影の町。その5
キューバ滞在最後の日、この日は晴れ。カーテンを勢いよく開けると部屋中に光が溢れる。目が痛い。夕方の便でカンクンへ向かうまでの間、いつものように青い海を見に行き、釣りをしているおじさんのバケツを覗き込み、通ったことのない狭い路地をうろうろブラつき、観光客の群がっているフリーマーケットを物色したりして過ごす。
b0115008_19351356.jpg
この数日、よく歩いた。ビーサンの跡がくっきりと足の甲に焼き付いている。部屋に戻りバックパックにぎゅうぎゅうと荷物を押し込み昼過ぎ、タクシーに乗って空港へ向かう。到着した時と変わらない風景も、わずかな時間でまったく違ったものに見える。第一印象も大事だけど、やっぱりそうじゃないものの方が大事。なのかね?お金を換金し、搭乗手続きを済ませ、出国審査をパスして、搭乗ゲートに整然と並ぶシートに腰かけ、時間になるまでパラパラと本を読みながら待つ。
b0115008_1935183.jpg
視線を上げれば、端まで確認できてしまうほどの小さな空港。高い天井には、世界中の国々の国旗がズラリと掲げられている。少し赤色が褪せてはいるけど、もちろん日の丸も。さすがにアメリカはないのかなぁと探してみると、あった。お隣の国同士、愛し合えとは言わないけれど、まぁまぁ、仲良くやっておくれよ、なんて思う。
ターミナルの中心部に大きな天窓があり、そこから文字通り明るい光がさんさんと降り注ぐ。これがとてもキレイだった。疲れてシートに横になって眠る人。ボケーッと飛行機を眺める人。読書をする人。ペラペラと旅の思い出話で盛り上がる人。グラス一杯のビールを傾ける人。すべての人を平等に光は照らし影を落とす。空港ではなく教会や寺院のような、とても神聖な場所のように思える。賛美歌代わりのアナウンスがスペイン語で鳴り響き、どこから入ってきたのか、小さな鳥たちがチュンチュンと我が物顔で構内を飛び回る。ここだけ時間が止まってしまったかのような美しい光景に、すべてを遮断して身を浸す。
b0115008_19344549.jpg
ここではないどこかへ。その理由はひとりひとり違うのは当たり前。向かった先に何かを求めがちだけれど、ここにいる自分に何もないから、人はどこかへ向かうのだ。そんなようなことが、たしか昔読んだ本に書かれていた。自分には何もない、と潔く認めることが出来ればどれだけラクだろうか。

時間になり搭乗案内のアナウンスに促されゲートをくぐる。アディオス、グッバイ、サヨーナラ。ここではないどこかから、どこかではないここへ。ひとり帰ることにする。
 
[PR]
by monday_panda | 2010-08-09 20:00 | daily | Comments(0)
<< 散歩時々写真。 踊る光と歌う影の町。その4 >>



イラストレーター栄元太郎のブログ。イラストや写真や言葉。溜まったものを、ぽこぽことアウトプット。
by monday_panda