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空きっ腹にバナナ。
昨日、柏の方まで球蹴りにゆく。お昼前には電車に乗り込み、ガタンゴトンと東京を横切り千葉県を目指す。めずらしく長い時間電車に乗るので、先日から読み始めていた、よしもとばななの『人生の旅をゆく』を読み進める。ここのところ、エッセイやノンフィクションものばかりを読んでいる。なぜか最近、小説や長〜い読み物は読む前に『ヨシっ!』と気合いをいれないと読めなくなっている。まさか、これは、老いなのか?

よしもとばななといえば『キッチン』。『TSUGUMI』や『アムリタ』『不倫と南米』『ハードボイルド/ハードラック』などたくさん著書がある。好き嫌いは別にして、文学少年ではなかった自分にとって、とても読みやすい作家のひとりだと思っている。ただ、何冊かしか読んだことはないけれど、どれも一様に似たような印象を受けるものばかりなのだ。もちろん同じ人間が書いたものなのだから、どこかしら重なる部分はあって当然なのだが。薄曇りの空の向こうに、まっ白な太陽がぼんやりと見えるような、暗闇の中でひそひそと何かの声が聞こえてくるような、すくってもすくってもサラサラと流れていくような、肩すかしをくらったような読み心地。たまたま自分が手にしてきた作品が、そうだっただけなのかも知れないけれど。
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ただ、今回の『人生の旅をゆく』は違った。東京で、日本で生活することのしがらみや世知辛さが、丁寧にじっくりと生きることの難しさや大切さが、著者の視点から深くやさしく描かれている。エッセイということもあり、小説では感じることの出来ない著者の心のずっと奥の方の部分が、ダイレクトに届いてくる。生々しい、リアルな、生きた言葉が一冊に、一節に、一言に詰まっている気がする。その言葉があの文体で書かれているものだから、すんなりと頭ん中に入ってくるのだ。丁寧に生きたい。読み終えて、ただただそう思った。柏駅に到着した時には、もう一度最初から読み返していたのだった。

空きっ腹にはバナナ。どうやら、空っぽの頭と心にも栄養満点の"ばなな"はいいらしい。
by monday_panda | 2010-09-27 17:16 | book
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イラストレーター栄元太郎のブログ。イラストや写真や言葉。溜まったものを、ぽこぽことアウトプット。
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