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やれやれ。
土曜日。昼下がり。休日のゆるりとした三両編成の多摩川線の車内。次の次の駅で乗り換え、僕は横浜へ向かう。人もまばらな座席。光が回る。前の席。膝に置いた文庫本に視線を走らせる同い年くらいの女性。車内アナウンスが流れ、パタンと本を閉じ、すっとホームへ降りてゆく。ビニールハウスのように冬の繊細な陽射しで、ぽかぽかと暖められた車内をリセットするかのように、乾いた冷たい風が一瞬吹き込み、頭の奥の方のモヤモヤを少し軽くする。彼女が手にしていた本のタイトルは『ノルウェイの森』

別に村上春樹崇拝者ではない。その著書のすべてを読んできたわけでもない。正直、マンガしか読んでこなかった10代。その終わりに、小説、読書、活字、本というモノを、本当の意味での読書体験というモノを、僕に叩き付けたのが『ノルウェイの森』だった。そんな気がする。だからというわけではないけれど、この作品に対して少し特別な意識があるのかもしれない。きっと、そんな読者が日本のあちらこちらにいるわけで。だから、わき上がる賛否両論。
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友達と一緒に『ノルウェイの森』を見にいく。優しくない海風に煽られ、赤レンガをひやかし、キラキラと丁寧に無機質に飾りつけられたイルミネーションが本領を発揮し始める時間、スクリーンの真ん前に陣取り、見たいような見たくないようなそんな心持ちで、上映を心待ちにする。開始10分。わからない。原作をそのまんま忠実に、再現するするくらいなら映像化する意味はない。新しい要素や違った見せ方だけに焦点を合わせても面白くはない。ブチ、ブチと途切れ途切れ、点と点がつながっていない感覚。『やれやれ、早く終わればいいのにな』と思ってしまった。隣の席の友達は『気分が悪くなった』とぼやいていた。ほんと、やれやれ、だ。

答えは否。あくまで、原作びいきの人間の感想として。たぶん古本屋でボロボロの一冊100円の上下巻を購入し、頭の中に生まれてくるイメージを鑑賞した方が100倍楽しめる。もちろん、BGMはビートルズの『ノルウェーの森』で。
 
by monday_panda | 2010-12-21 01:01 | movie
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イラストレーター栄元太郎のブログ。イラストや写真や言葉。溜まったものを、ぽこぽことアウトプット。
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