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うららかさんぽ 35
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午前8時過ぎ、石川県は白山市美川にある友人の実家で目を覚ます。まだ隣で友人たちは泥のように眠っている。そっとドアを開け、からからと玄関の引き戸をくぐり、涼しい朝の空気に身をさらし、煙草の先に火をつける。ちょうど一年前、みんなで歩いた海への道を思い出しながら、同じようにぽてぽてと歩いてみる。町はとても静かで、浅い眠りの淵をゆらゆらと漂うようで、夢から覚めるのを拒んでいるようで。顔をあげた視界の先に、北陸ならではの重い曇り空の下に、彩度の低い日本海が広がる。地元ではないのに帰って来たなぁという感情がじわっと湧いてくる。昨晩の賑わいと酒で火照った頭と身体から、潮風が少しずつ余熱を奪ってゆく。おかえり祭りに足を運びはじめて三年目。初めて紋付き袴に身を包み、地元っ子の顔をして台車を引かせてもらう。希有な夜だった。少しずつこの土地が、訪れる場所から、帰ってくる場所になりつつあるのかもしれない。毎年、東京からふらりとやって来る、三十路を越えた独身の男どもを、お母さんやお父さんはさらっと迎え入れてくれる。どうなんだろう。寅次郎の帰りを待つ、とらやの面々のような心持ちなんだろうか。そう考えると甘えているな。甘んじているな。それでもまた来年も、きっと、ここへ、ふらり。ただいまと帰ってくるんだろうな。
(石川県・白山市・美川町・おかえり祭り)
 
by monday_panda | 2013-05-22 15:59 | stroll | Comments(0)
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イラストレーター栄元太郎のブログ。イラストや写真や言葉。溜まったものを、ぽこぽことアウトプット。
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