人気ブログランキング |
Top
うららかさんぽ 37
うららかさんぽ 37_b0115008_116534.jpg

お盆直前。お仕事で秋田へ向かう。始発の新幹線のシートに身体を埋め、コクリコクリ。意識の境界線をあっちへこっちへ。もう少しで盛岡という所で『岩手秋田の県境付近での大雨のため、新幹線の運行を一時見合わせます』との車内アナウンス。盛岡駅の構内は、どこにも向かえない人たちでごった返している。用意されたパイプ椅子に腰掛け、何度も読み返している文庫本をパラパラと眺める。結局、新幹線は不通となり、秋田へ向かう人達は次々と代替バスに押し込められる。どしゃ降りの生ぬるい雨の中、秋田に向けて出発進行。新幹線がダメなのに、バスで大丈夫かなぁ?と思ってから一時間後、まんまと岩手の山中で土砂崩れと冠水のため立ち往生。帰りたい帰れない。秋田へも向かえず、盛岡へも引き返せない。山道のすぐ横では、普段の何倍にも膨れ上がった川が狂ったように流れている。雨はさらに激しさを増す。なんとかかんとか雫石の道の駅に避難。待機。ようやく長期戦を覚悟。“さてさて、どうすっかなぁ?…どうにもならんなぁ”と煙草をぷかぷか。誰もが手持ち無沙汰で、止みそうにない空を見上げたり、川の様子を見に行ったり、手の中で充電の切れそうな携帯をもてあそぶ。あちこちで安否を伝える声や、仕事の断りをいれる声も聞こえる。ただただ、待つのみ。ただただ、状況が好転するのを静かに待つだけ。

状況がまったく分からないまま、待つ待つ待つ待つ。炊き出しが始まり、電気は止まり、灯りのない山中はあっさりと暗闇に包まれ、非常灯の小さな灯りがゆらゆらと辺りを照らす。ひそひそと話すか細い声は、川の轟音にかき消されていく。21時。ようやく盛岡への道が通行可能となり、50台を越えるタクシーが次々とやって来た。まるで戦隊ヒーローのスーパーカーみたいだ。一列に連なるフロントライトが単純にキレイで心強く思えた。なんだか少し疲れた。これまでに経験のないような大雨で、これまでに経験のない一日を過ごすことに。ホームに静かに横たわる行き先のない新幹線の座席で、浅い眠りへ落ちてゆく、盛岡の夜。いつのまにか雨は止んでいた。きっと明日は晴れるだろう。
(岩手県・岩手郡・雫石町)
 
by monday_panda | 2013-08-21 11:50 | stroll | Comments(0)
<< うららかさんぽ 38 illustration wo... >>



イラストレーター栄元太郎のブログ。イラストや写真や言葉。溜まったものを、ぽこぽことアウトプット。
by monday_panda