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オシゴトノコト 01
 大学を卒業し広告制作会社で働きはじめ、一日の半分以上をパソコンの前でカチカチと過ごす日々が始まり、『はっ!』と気づいた時にはあっという間に6年が経っていた。仕事、仕事、仕事。協調性に欠けるマイペースな自分にしては、なかなか長く続いたもんだと思う。我慢、意地、惰性、そして麻痺。そういえば、学生時代の恩師も『おまえは一年で辞めると思ってたけど、よく続いたなぁ』と言っていた。
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 年に一度、正月に帰省すると両親に『仕事はどうだ?』なんて聞かれる。がしかし『これこれこーだ』と話したとこで、息子がいったいどんな仕事をしているのかを簡単には理解してもらえない。『広告を作っとる。電車の中吊りとか、雑誌広告とか、いろいろ。』といっても、田舎のおじちゃんおばちゃんにとって広告とは、新聞に折り込まれているスーパーのチラシくらいの感覚なのだ。電車も一時間に数本しか走らない。しかも2両編成。中吊りってなんだよ?という感じなのだ。パソコンもない、ネットも出来ない、雑誌も買わない、そんな両親が唯一、自分の仕事を目にする可能性があるとすれば、それはきっと新聞広告なんだろうなぁと、その当時、なんとなくそんなふうに思っていた。

 『徹夜もあるなー』『帰れん日もあるし』『外食ばっかや』とへらへらと言う僕に、普段はニコニコしている父も顔をしかめる。そこまでして働く必要があるのかと?それが人の生活なのかと?そこまでして働く必要はない!と口にはしないが、明らかにその目の奥から訴えてくる。そして僕は無言で目をそらす。『楽しいのか?』の質問に、毎度毎度『…ん〜、まぁ普通やけどなぁ』としか答えられなかった。そして最終的には、『おまえが本当に好きなことをやれよ』という一言でお仕事の会話は終わる。

 そして、僕は1年半前に会社を辞めた。何がしたいのかも分からず、働きもせず何もしない一年は、何かをしている一年よりも何倍も早く過ぎていった。さてさてのんびりではあるけれど、本当に好きなことをやろう。それでお金を稼いで飯を食っていこう。次に帰る時は、新聞も持って帰ろう。しかめっ面の親父に、これが俺の本当に好きなことだと言ってやろう。
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7/6(水) 読売新聞(東北版)、河北新報、岩手日報掲載。
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7/17(日) 河北新報掲載。
Save the Children JAPANの新聞広告でイラストを描かせて頂きました。
 
 
 
by monday_panda | 2011-07-29 02:30 | works【 illust 】 | Comments(6)
青い奇跡。
 月曜日の早朝。まだアナログ放送のテレビの前で、僕は目を潤ませていた。女子ワールドカップ決勝。喜びを爆発させる選手たちの姿に『やったなぁ...』と声にならない声を漏らしていた。

 先のワールドカップ南アフリカ大会、男子のベスト16にも感動はしたけれど、それとはまた違う感情がある。震災から4ヶ月。今は世の中のすべての事象が震災に結びつく。何をやっても何をやらなくても。そんな中、なでしこの諦めない気持ちや、どんな状況でも満面にたたえるその笑顔は、東北へ日本へ、確かに届いたのだろうと思う。東北を日本を、勇気づけたのだろうと思う。

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(Click!でLarge!)

 僕は小学3年の時にサッカーを始めた。かれこれもう20年以上経つ。当時、日本はワールドカップに出場したこともなかったし、Jリーグもなかった。サッカー番組もサッカー雑誌も、ほとんどなかった。そんなサッカー少年達のバイブルは『キャプテン翼』だった。翼くんが『ワールドカップで日本を優勝させる!』みたいなことを言っていたけど、まったくピンとこなかった。ワールドカップがどんな大会かもよく分かっていなかった。中学の時Jリーグが出来て、高校の時ワールドカップに初出場した。ようやくサッカーが日本でもメジャースポーツになってきたのは、きっとこの頃から。
 正直、男子、女子に関わらず、自分が生きているうちに日本がワールドカップで優勝するなんてことがあるとは思っていなかった。でも、きっと、そういう想いがある人間はサッカーをどこかで諦めた人間で、『優勝する!』と想いを持ち続けている人間だけが今、Jリーグや海外リーグでボールを追っかけているのかもしれない。

 海外メディアなどでも『青い奇跡』と報じられている、なでしこジャパンの優勝。しかし偉業を成し遂げたメンバーにとって、今大会の優勝は女子サッカー日本代表が誕生してから30年の『軌跡』のひとつであり、常識で考えて起こりえない出来事ではなかったのだろう。たしかに大きな一歩ではあるけれど。大胆や勇敢という花言葉も持つ、なでしこの花。世界に向けて咲き誇った、なでしこの笑顔。その笑顔に大和撫子の底力を見た気がした。心ふるわせる、心おどる、特別な瞬間をありがとう。


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楽しげで良さげなイラスト取り扱っております★
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by monday_panda | 2011-07-23 14:30 | illustration | Comments(0)
ラクゴラク。
 先週、今後のお仕事の参考になるだろうからと、クライアントさんのご好意で、落語を聞きに国立演芸場へ行ってきた。生で見るのは確かこれで三度目である。この日は “三遊亭白鳥・春風亭百栄・春風亭一之輔 それぞれの「大工調べ」” という落語会。

 そもそも、落語が大好きというわけでも、ましてや足しげく寄席に通うというわけでもない。仕事しながらイヤホンで有名どころの噺を聴くという、とてもミーハーな、まぁまぁ、興味はあるけど…。という程度のもんである。とはいえ、がっつり落語にハマりそうになったきっかけが、今までなかったわけではない。
 例えば、社会人になりたての頃にやっていた、宮藤官九郎脚本の『タイガー&ドラゴン』。毎週ビデオに撮って見ていた。このドラマきっかけで、落語を聞くようになった若い人は意外に多かっただろうなと思う。その他にも、数年前、朝ドラで放映されていた『ちりとてちん』。これも毎日かかさず会社に行く前に見ていた。それ以外にも、会社勤めしていた時の上司が、隣の席でよくiPodで落語を聞いていた。僕が退社する時、プレゼントで貰った落語のCDは、僕のiPodでしっかりと再生回数を増やしている。
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 18時半開演。もう席はほとんど埋まっている。やはり年齢層は高めだけれど、若い人も意外に多いんだなぁと、会場を見回して思う。演目の内容がどうのこうのだとか、あそこの言い回しがちょっと…、などと言えるレベルの落語通ではないので、あくまで小学生の読書感想文的な、感想を。

 こうして生で聞くまではなんだか、昔の言葉遣いや、落語特有の言い回しなんかもあって、もしかするとけっこう高尚な娯楽なのかと思っていた。それでも、いざ会場へ足を運んでみると、『そんなに笑って大丈夫っ?』というぐらい、『ひぃーひぃー!』『アハハっ!』と笑い声で会場が震えるのを肌で感じる。最低限のマナーさへ守れば、もうあとはその笑いの中に身を浸せばいいのだ。おもしろければ笑えばいい。当たり前のことなのだ。なにも構える必要はなかった。しかし、久しぶりにあんなに大勢の人がゲラゲラと大爆笑するのを聞いた。それはとても気持ちのいいものだ。幸福というよりは愉快という言葉が当てはまる。
 足しげく通う落語ファンからすれば、『今日の演目はイマイチだったなぁ~』とか『この師匠は人情話はむいてねぇなぁ!』とかいろいろあるのだろうけど、いかんせんずぶの素人の僕には、どれもこれも新鮮で『ほほ~』と唸ってしまうものばかり。というよりも、単純に、高座の上でたった一人、言葉と仕草だけを操って、何人もの人々を演じ、何百人もの人達を大爆笑させる、その話術、技量に感服する。噺家さんのうしろに情景がゆらゆらと立ち上ってくる錯覚すら感じられることに、畏敬の念すら湧いてくるってものだ。何百年と続く日本の伝統的な話芸。はやり廃りの激しい世の中で、変わらずこうして、今も昔も多くの人に愛されてきたという事実。こんな近くに、こんな豊かな楽しみがあったのか。

 ムクムクとせり出した夏雲の下を、雪駄をつっかけて、ポケットには手拭いをつっこんで、扇子片手に、また腹を抱えて笑いに行こう。ウキウキ、ソワソワと浮かれた気持ちで吉原へ通う、若旦那のように。
 
by monday_panda | 2011-07-14 00:50 | illustration | Comments(2)



イラストレーター栄元太郎のブログ。イラストや写真や言葉。溜まったものを、ぽこぽことアウトプット。
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