人気ブログランキング |
Top
<   2017年 06月 ( 1 )   > この月の画像一覧
illustration works 62
illustration works 62_b0115008_14051215.jpg
illustration works 62_b0115008_14052399.jpg

東京ハイヤー・タクシー協会が新卒学生向けに大学等で配布するチラシに、イラストを描かせていただきました。来たるべき2020年に備え、海外からのお客さんへの“おもてなし”を推進しているタクシー業界の仕事をアピールするものです。

正直、普段の生活の中で、タクシーに乗る機会はほぼありません。終電過ぎても呑んでいて真夜中にお開きになった時に、始発まで待つ元気がないと仕方なく乗るくらいです。それでも以前、デザイン事務所に勤めていた頃は、夜中まで仕事をして2時や3時にタクシーで帰ることがよくありました。眠くなければ運転手さんと会話する事もしばしば。そんな真夜中のタクシーには、いろんな運転手さんがいました。出身地の話しから、自身の半生を浪曲師のように語る運転手さん。若いんだから苦労はしなさい!と、人生の大先輩を演じる運転手さん。他のタクシーに追い抜かれたら、舌打ちして速度を上げるスピード狂の運転手さん。私こっちの方は走らないんですよ~。と終始ぺこぺこと道順を聞いてくる、上司にゴマをすっている部下のような運転手さん。広告業界の現状やら景気をやたらと細かく尋ねてくる、産業スパイのような運転手さん。などなど十人十色です。

ある時、会社の人から『昨日、ずっと徳永英明の歌を流しているタクシーに乗ったけど、めちゃくちゃ癒された!』という話しを聞きました。その時は『へぇ~、そんなタクシーもあるんやなぁ』と思ったくらいで、さほど気にも留めていませんでした。そんなことも忘れていたある日、その日も真夜中までの仕事を終え、へろへろでタクシーのシートに深く身体を沈め、行き先を告げました。ゆっくりとタクシーが走り出すと、静かに徳永の声が聞こえてきました。“もしも願いが叶うなら 吐息を白いバラに変えて~♪” 徳永英明の歌う『恋におちて』でした。
『遂に出たなっ!徳永タクシーっ!』と思ったのは言うまでもありません。ツチノコを発見したような気分でした。運転手さんと話すのは別に嫌いではないけれど、仕事でくたくたになった日は会話するのもしんどいもんです。そんな時、繊細でやわらかな徳永の歌声は、ほんまちょうどええなぁと思ったのです。特にファンというわけでもないのに、疲れた心と体にじわりと沁み入り包み込む、英明の歌声に見事に癒されたのでした。運転手さんの選曲に脱帽でした。残念ながらそれ以来、一度もあの徳永タクシーには出くわしたことはないのですが、僕にとっては、今まで乗った中で一番、“おもてなし”を実感したタクシーでした。今日もまた東京の、行きばのない押し寄せる人波の中を走りながら、誰かしらを癒しているのでしょうか、徳永タクシーは。 

Media:A5チラシ
 
 
 


by monday_panda | 2017-06-07 15:50 | works【 illust 】



イラストレーター栄元太郎のブログ。イラストや写真や言葉。溜まったものを、ぽこぽことアウトプット。
by monday_panda