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タグ:アート ( 25 ) タグの人気記事
ユルギナイカクゴ。
 二十歳そこらの頃、好きだった子が『妊婦さんって、それだけでどんな女の人よりも綺麗だよね』と言っていた。当時の僕にはその言葉の本当のところを汲み取ることが出来なかった...。だけど今日、少しぼんやりと、その言葉の意味が分かったような気がした。

 知人のフォトグラファー、武藤奈緒美さんの写真展『ハハニナル』を観に、大学の友人と二人、ぷらっと吉祥寺へ向かう。さすが住みたい街ランキング上位に名を連ねるだけのことはある。平日の昼間にも関わらず、人も多く街もにぎやかだ。でもその喧噪はどこかやわらかく、トゲトゲしてなくてあたたかい。

 中道通り沿いにあるギャラリー『百想』へ。黒を基調とした古民家風の展示会場。懐かしく深い木の温もりと、そこにピタリと合った着物姿の武藤さんが迎えてくれる。
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 展示されている作品は、武藤さんの友人や知人の『ハハ』になり、『ハハ』となった人の素顔を撮ったもので、大きなお腹をした生命力に満ち溢れた『ハハ』達の写真が並んでいる。スッとしていて凛としていて、強く美しい。その表情からも、そのたたずまいからも、確かなブレることのない覚悟が感じられる。

 どう頑張ってみても『ハハ』にはなれない男には、入り込めない侵すことのできない領域。サンクチュアリ。『女は弱しされど母は強し』って言葉があるけれど、最近じゃもう"女は弱し"にも首を傾げてしまう。僕から言わせれば『女は強しさらに母は恐し』だ。でも歳を重ねるごとに、反発ばかりしていた母親への『ありがとう』の気持ちが強くなる。きっとそれは母親が、母になり、母となったその瞬間から、その揺るぎない覚悟の中で、ずっと自分のことを見守ってくれてることに、この歳になってようやく気づき始めたからだろう。その想いに応えるには早く『チチニナル』ことが一番かもしれないなぁ。と『ハハニナル』を観て思ったのでした。
揺るぎない覚悟、揺るがない愛、そんなものをまざまざと見せつけられた写真展でした。

写真展詳細はこちら → □ 武藤奈緒美写真展 ハハニナル □ gallery re:tail
 
by monday_panda | 2011-01-22 04:22 | art | Comments(0)
聖誕祭の過ごし方。
 25日、クリスマス、例年通りなんの予定もない僕はというと、フォトグラファーのMさんから、代打に指名され、意気揚々と両国の「するところ」でのワークショップの撮影へと向かう。大阪在住のクリエイター・林泰彦氏と中野裕介氏によるユニット「パラモデル」による「パラ・デ・トーキョー」の2日目。しかし、寒い日だった。ポケットに突っ込んだ握りしめた指先が、ピキっと固まり、自分の身体の一部とは思えないほどだった。
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 『ご無沙汰しております』『よろしくお願いします』とスタッフの方とパラモデルのお二人に挨拶をする。『あ、やっぱり』と思った。パラモデルの林さんは、僕が大阪で浪人してた時、生徒から『ジョニー』の愛称で親しまれていた予備校の先生だった。『憶えてますか?』と聞いてみるとポカンとしている。そりゃそうか。12年も前の何百人もいる生徒の中の一人。大して絵がうまかったわけでもないし、あまり目立つタイプでもなかったのだから。それでも、当時の浪人仲間の名前を出したり、先生達の近況を聞いたりしていると、ぼんやりと記憶が蘇ってきているようだった。こちらもウダウダとモヤモヤと大阪で過ごした、遠い懐かしい映像や匂いががぐぐっと押し寄せてくる。去年の金氏さんもそうだけど、同じような場所に長くいると、こんなふうになにかで繋がっていることを実感し、少し嬉しく思う。
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 この日のワークショップは、個人個人で外へくり出し、デジカメで撮影した風景やモノをプリントアウトし、それに思い思いにタイヤを描き、壁に貼りつけ、室内の壁中を駐車場にしようという企画。(であってるのだろうか?)初日と最終日に参加していないので、これがどんな風に着地するのか、まったく想像出来ないまま、作業開始、撮影開始。
 勢い良く「するところ」を飛び出し興味の赴くままカメラを構えるチビッコの後を追い、こちらも負けじとシャッターに指をかける。『なんで?』と思うものに、やたらと執着するのは子供の得意とするところ。その感覚って純粋にアートなんだろうと思う。計算されていない、計算できない感覚。そんなことを考えながら、室内と屋外をフラフラと行ったり来たり。真剣に作業に取り組むチビッコ、お父さんお母さんを撮らせてもらう。何かに没頭する、夢中になる表情はそれだけで人を惹きつける。そんな姿を50cmの至近距離から、直視するなんて機会はそうそうない。自分も同じような顔をしてたんだろうか?カメラマンっておもしろい仕事だなぁ、そりゃやめられないよなぁ、なんてことも思う。走って、撮って、騒いで、描いて、貼って、また描く。あっという間の2時間。壁中に貼られた個性豊かな車をみんなで眺めながら、パラモデルのお二人の講評に頷き、感心し、最後に集合写真を撮って、この日は終了。またこれが、最終日へつながる。今日が明日へつながる。
聖誕祭の過ごし方。_b0115008_6154268.jpg
 たった2時間で、チビッコからもパパママからもパラモデルのお二人からも、予想以上のパンパンっと弾けるエネルギーや、ムンムンっと充満するパワーをたくさん頂いた気がする。ありがたい。おもしろい。2010年のクリスマス、きっとそんなモノが、サンタさんからのささやかなクリスマスプレゼント。なんてな。
by monday_panda | 2010-12-28 06:17 | art | Comments(2)
ピンチヒッター。
土曜日、一歩踏み出すごとに足の底から数ミリずつ融けていってんじゃなかろうか?と疑ってしまいそうな炎天下のもと、相撲の町、両国へ。

以前お仕事でご一緒させていただいたフォトグラファーの方から、ピンチヒッターをお願いされ『するところ』で行われたワークショップの撮影へ向かう。ピンチヒッターというよりも、ピンチランナーぐらいのものかな?写真が好きだとはいえ、素人の自分が写真を撮っても問題ないのだろうか?と最初は腰が引けるも、こんな機会はコレを逃せばそうそうないだろうからと、この日だけはカメラマン(仮)になりきりワークショップにのぞむ。
ピンチヒッター。_b0115008_12594323.jpg
今回のワークショップは谷山恭子さんの『みんなの絵本・みどり』
みどりいろのクレヨンや絵の具、色紙を使い、参加者が自由に絵を描き、出来上がったみんなの絵が一冊の本にまとめられる、というもの。赤・青・緑とつづく『みんなの絵本』シリーズ全3回の最終回。大半はご近所のちびっこにパパママだけれど、中には学生さんや社会人の方もちらほら。

作業が始まり、まっ白な画用紙がだんだんとみどりいろに塗り変わっていく。子供も大人も夢中になって、直感的なアイデアや理論的なイメージを定着させていく。そんな熱さと暑さでムンムンするスタジオの中を、汗をダラダラ流しながら、ちょろちょろと動き回りシャッターを切る。普段のようにの〜んびりカメラを構えてカシャっと一枚撮るようなことでは、やっていられない。ポンポンポンとテンポ良くシャッターをきり続ける。スピード、タイミング、シャッターチャンス、どれもこれも重要だ。本当に難しいよなぁ...どうしよう?などと思い悩む暇もない。無我夢中。あっというまに2時間が過ぎていた。
ピンチヒッター。_b0115008_12593171.jpg
帰り際『今日はありがとうございました』と声をかけられる。『いやいやこちらこそ、本当にありがとうございました』なのだ。ホームランは望まない。内野安打でも相手のミスでもいいから、せめて塁に出られるようなもんが撮れていますように...と切に願うばかりなのです。
 
by monday_panda | 2010-07-27 13:03 | art | Comments(0)
軸足は美術。
土曜日のお昼下がり、京急沿線の小さな駅で降車。照りつける陽射しから逃げるように、作品制作のお手伝いのため、大学の同級生のお宅を目指す。ピンポーンとお邪魔するやいなや、『昨日、入籍しました!』と突然の告白。『!!!おっ、おぉ〜、ぉめでとぅ!』とすっとんきょうな返事をしてしまう。
軸足は美術。_b0115008_15915.jpg
美術の先生をしながら、作品づくりを続けている彼の作品と姿勢にはいつも感心させられる。今回もまた、新しいジャンルの作品に挑戦中だった。部屋中にシルクスクリーンの版や木枠にピンっと張られた布が所狭しと並んでいる。作品の内容、作業手順を聞き、材木と溶剤と汗の臭いに包まれながらのんびりと作業を始める。美大を出てからは、こういった作業とはまったく縁がなくなった。唯一まだ続いているイラストといえば、紙と鉛筆とパソコンだけのデスクワーク。久々に額に汗しながら、身体を目一杯使う作業に新鮮な気持ちにさえなる。トントントン、チリリチリン。トンカチの音に合わて縁側の風鈴が鳴る。一服ばかりしながら、途切れることなく世間話や美術談義に花が咲く。夢中になって手を動かし口を動かし、気づけばとっぷりと日は暮れていた。
軸足は美術。_b0115008_1591343.jpg
作業が終わると同時に、彼女から新妻になりたてホヤホヤのお嫁さんがお仕事から帰宅。『あぁ〜つかれた〜』と言いながらも、手際良く食事の準備をするその姿からは、幸せなにおいがプンプンする。微笑ましくもあり羨ましくもある。『おつかれさま〜』と3人で縁側のテーブルを囲んで晩餐。会話の中で人生が2度あれば?という話題になり、『ピアニスト』『古着屋』『絵描き』などと生きられなかった人生を思い思いに口にする。
ただ、作業中に友人が『人生は一回しかないから』と何の気負いもなくサラッと口にした言葉に、静かな確かな覚悟を感じた。すきなことをやり、すきな人と一緒に生きる。単純でシンプルなことの方が本当は難しいのかもしれないな、とも思うのです。

旦那くんのグループ展はこちら→http://www.zoku-zoku.com/index.html
 
by monday_panda | 2010-07-11 23:52 | art | Comments(2)
絵を描く勇気。
昨日、麻布の方に行く予定があったので、そのまま足をのばして新宿まで。東京オペラシティアートギャラリーで開催中の『猪熊弦一郎展 いのくまさん』を見に行く。特に美術に関わりのない人でも香川県の人は一度は名前を聞いたことがあると思う。小学生の時に地元香川、丸亀市に建設された猪熊弦一郎現代美術館。小・中・高生時代に遠足や課外授業などで訪れたことのある讃岐っ子は多いはず。今でこそ、直島や犬島、7月から始まる瀬戸内国際芸術祭などで、讃岐うどんだけでなく、芸術・アートという部分で注目はされているけれど、当時はただただうどんだけがウリの県。そんな中にポツンと建った美術館。それはもう珍しいのなんのって。展示されている現代美術ってもんはわかんねぇけど、観てるだけで上手くなれるんじゃなかろうかと、僕もしばしばひとりでぷらりと訪れたもんです。いのくまさんのTシャツも襟元でろでろになるまで着てたもんです。
絵を描く勇気。_b0115008_12481896.jpg
10数年前に観た時はまったく意味も分からなかったいのくまさんの絵は、少しは美術を勉強してきたからなのか、それとも単純に歳をくったからなのか、谷川俊太郎のことばを上手く使った展示の見せ方もキレイで、何の邪念もなく素直にいいなぁと思えるもんでした。
一見、稚拙で、小学生が描いたようにも見える、人の顔や猫や鳥の絵。でも、描けと言われると描けない。その人にしか描けない。その人でしか描けない。『絵を描くには勇気がいる』という、いのくまさんの言葉。勇気という覚悟。僕も勇気をふりしぼって絵を描かなければ。と香川の大先輩に教えられるのです。
 
by monday_panda | 2010-06-19 12:55 | art | Comments(0)
たんたんたんと。
先日、夜にお友達に会う予定があったので少し早く出て中目黒で下車。そのままとっとことっとこ広尾まで歩いてみる。暑くもなく寒くもなく、ちょうどええ、ほんまちょうどえぇ季節になってきた。

目的地は広尾駅近くにある、EMON PHOTO GALLERY。市橋織江展”Gift“を見に行く。働いていた頃によく雑誌や広告で目にした、色の淡いなんか気になる静かな写真。生のプリントも見てみたいなぁなんて思っていたので、いい機会だった。印象的な、光の白と空の水色。単純にキレイだと思った。キレイってだけで十分なんだと思った。そこには淡々とした強さがあった。

広告の仕事に携わって6年。今はその場から一時撤退。また縁があればその現場に戻るかもしれないし、まったく別の場所に身を置くかもしれないけれど。広告の仕事において、写真、カメラマンさんというのは切っても切れない関係で、大半の仕事で写真は必要となる。デザインだけがとても洗練されていても、写真だけがとびきり魅力的でもダメ。デザイン次第でいい写真をダメにしてしまうこともあるし、その逆もまたしかり。バランスが大事なのだ。その塩梅が。なんてことを教えられた。
たんたんたんと。_b0115008_0303344.jpg
ただ正直なところバランスばっかり考えてもつまらん。それは広告のお話に限らずなんにおいても。お互いが低い位置にあるならなおさらで。そのバランスを崩してでも成り立ってしまう個々の強さがあり、時にはアンバランスな不均衡な心地よさもある。個があってこそのチームワークなもんで。足を引っ張らない程度に、うまく補う程度に、なんて考えもどうなんだろう。小さくまとまるよりも、大きくはみ出すくらいが見てて痛快だったりするけれど。

あっさりと何色にでも染まり、こだわりもなく何者にでもなれる、それでも揺るがない淡々とした強さに憧れる。淡々とした美しさに憧れる。
 
by monday_panda | 2010-04-26 23:58 | art | Comments(3)
携帯する芸術。
一日中、冷たい雨が降っていた先日、元麻布へ。
元職場の同じチームだったADから”カイカイキキギャラリーでケータイ写真展っていうのがありようよ“というメールをもらう。参加アーティスト/写真家は鈴木心、佐藤玲、若木信吾。おぉ、そそられる。中でも佐藤玲の作品を見たくて、有栖川宮記念公園横の会場へ続く緩やかな坂道をとっとことっとこといそぐ。吐く息はまだ白い。

雨、平日、昼間のせいかお客さんは自分を含め3人。白いギャラリーの壁に向かいしげしげと作品を見やる。普段の生活の中で自分はケータイで写真を撮ることがあまりない。デジカメをいつも持ち歩いているということや、自分のケータイの写真機能の性能の問題、それとなんでもかんでもケータイを取り出して、無遠慮にパシャパシャ撮るあのスタイルが嫌いなのだ。

携帯する芸術。_b0115008_23103870.jpg

そんなふうに自分があまり活用していないケータイ写真が、この3人のフィルターを通せばどんなふうにアウトプットされるのか?そんな単純な興味に明快に答える作品の数々。現在のケータイのカメラ機能は、もはやコンデジと比較してもなんの遜色もないということもあり、ケータイで撮ったと言われなければ、分からない程の質の良さ。に加えての対象に向かう独自の目線。目にするまでの予想に反して、とても見応えのある展示だった。それぞれの持つ確かなオリジナリティ。いいなぁ。自分にもそういうのがあればいいなぁ。なんて思う。

オンリーワンのなにか。唯一無二のなにか。自分にしかない、なにか。
 
by monday_panda | 2010-03-27 23:27 | art | Comments(0)
漫画の虫。
初めて親に買ってもらった漫画は『鉄腕アトム』。たしか小学校の低学年の頃だったと思う。自分から鉄腕アトムが読みたいと言ったのか、親が勝手に選んだのかは忘れてしまったけれど。よくよく考えてみると母親が手塚漫画の愛読者だったこともあり、きっと親の独断で買い与えられたんだと思う。あれから20年。今も僕の部屋の本棚には、もう何年も開いていない黄ばんでボロボロになったアトムが並んでいる。

先月、江戸東京博物館で展示されていた”手塚治虫展-未来へのメッセージ-“へ。以前見に行った井上雄彦 最後のマンガ展ほどではないにしろ、一枚の原画を見るのにも苦労する混み具合だった。ちょっとでも空いている場所を見つけては、順路おかまいなしで人の間に滑り込み、丁寧に額装された歴史を感じる原画に鼻っつらをすり寄せて凝視する。当たり前に上手い。そして何より一コマ、一コマの情報量が想像以上に多い。単行本で読んでいるのと内容は同じなのに、こういう状況で見ると普段より丁寧に見るからなのか、背景の細かい書き込み、繊細なタッチが妙に際立つ。手塚作品がいまだ強い影響力を持つのは、この高い描写力・デッサン力もさることながら、作品ごとに掲げられた深いテーマにあるのだろう。ともすると偽善、説教臭いととられ かねない、生命の尊厳・ヒューマニズムといったテーマを軸に、民族紛争・環境破壊・人種差別などたくさんの問題がちりばめられている。しかし、手塚作品独特のユーモアや、スター・システムによる個性的なキャラクター達によって、敬遠されがちな難解なテーマも”大衆の娯楽、漫画“として読者の手元に届けることに成功しているのではないだろうか。
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などと偉そうにぺらっぺらな考察なんぞをしてみる。なんだか漫画家の友人にダメだしされそうだけれど。鉄腕アトム、ブラック・ジャック、火の鳥、ジャングル大帝、三つ目がとおる、ブッダ、ユニコ、どろろ、海のトリトン、リボンの騎士と、パッと思い出しただけでもこれだけの人気作品が出てくる。1日、1時間、1分、1秒、すべてをマンガに費やしても、一人の漫画家がこなせる仕事量ではない。この日、一番強く感じたことは”質より量、量より質“ではなく、質も量も圧倒的に超一流だということ。感心よりも驚愕。
手塚治虫はまさに漫画の虫。誰からも愛される虫でした。
by monday_panda | 2009-07-21 23:54 | art | Comments(4)
先生。
先月のこと、5月の終わりまで横浜美術館で開催されていた『金氏徹平:溶け出す都市、空白の森』へ出かける。この展示を知ったのは、でかでかと『金氏徹平』と刷られた電車の中吊り広告で。『かねうじ?カネウジ?テッペイ・・・!?』

美大を目指して、大阪でぷらぷらと浪人していた頃、通っていた美術の予備校には講師として、京都芸大の学生が何人か教えに来ていた。当時、浪人生だった僕には、美大生は個性的で、絵がうまくて、なんだかとてもすご〜い人に見えていた。ある日の色彩構成の時間後に『この絵だと何が言いたいのかが伝わらない』と酷評された僕の後ろに立っていた講師が『俺はその絵、ええと思うけどな』とボソっと呟いた。もう10年も昔のおはなし。その一言をポロリとこぼした人物こそが金氏徹平、その人だ。猫背で、人の目を見ないでボソボソと喋り、そのくせポロっと言った一言がおもしろかったりする。変わった人だった。教えてもらっていた生徒からすれば、なかなかとっつきにくい先生だったけど、話してみるとその独特の世界観がとてもユニークで面白かったことを思い出す。
先生。_b0115008_23294783.jpg
東横線に揺られみなとみらいまで。地下からスイーっとエスカレーターで地上へ上がると、威風堂々、横浜美術館が姿を現す。受付で1000円を払って展示会場へ足を進める。容量たっぷりの広々とした白い空間に、立体、コラージュ、ブリコラージュなどが静かに存在感を放っている。がむしゃらに主張しすぎるわけでもなく、かといって素通りできるようなものでもない。自分の中では”なんだか気になる”というのが一番ピッタリの感想だろうか。ひとつひとつ”ん?なんやこれ?”と全体を見て、細部を見て、また全体を見る。普段、抽象的で作者の発するメッセージを汲み取ることのできないような難解な作品は敬遠しがちだけれど、どれもこれも足を止め、顔を近づけ向かい合う。大学では彫刻を専攻していると言っていたけど、映像作品、ドローイング、写真と作品の幅は広い。どの作品からも、ちびっ子が何にでも興味を示すような無条件の好奇心を掻き立てられる。"分からないことが気持ちいい" といった感じ。よかった。見に行ってよかった。
10年の歳月は、ちょっと変わった先生を今注目の若手アーティストにしていた。
by monday_panda | 2009-06-08 23:37 | art | Comments(2)
その道をゆく。
この2週間笑ってしまうくらいに仕事にどっぷり。42.195kmという決められた距離を走るのならまだしも、ゴールは自分勝手に位置を変え、そこへにじり寄っても、すぐまた違う場所へヒラリと飛び移る。終わらない鬼ごっこ。それでも、ようやくこの3連休は一旦休戦。街がゆっくりと動き始めた頃、アパートへ帰り死んだように寝る。昼過ぎに目を覚まし、ナビスコカップを寝ぼけ眼で観戦。大分トリニータの初優勝に大いに感動。アンチヒーロー。伏兵の快進撃に心が躍る。

夕方、このまま一日が終わりそうな気配。まずい、まずいと外に出る理由を探す。
1週間程前、以前お仕事でお世話になったカメラマンの方から届いた一通のDM。

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 武藤奈緒美 作品展 「空想文学旅 vol.1」
 日時 2008年10月17日(金)→11月8日(土)
 会場 広告製版社AAT ロビーギャラリー
 詳しくは→武藤さんのホームページ
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その道をゆく。_b0115008_12511593.jpg
京浜東北に乗り込み田町まで。入社一年目、しょっちゅう仕事をさぼってはボーッと時間を潰していた川縁を通り作品展の会場へ。2Fのエレベーターを降りると白い空間に丁寧に配置された写真が目にスッと入って来る。来場された方と談笑されている武藤さんに軽く会釈をし、写真を一点一点拝見させてもらう。作品は武藤さんが好きな文学作品に描かれた土地を訪れて撮ったもの。三重、奈良、和歌山。以前、ご一緒させていただいた仕事とはまったく違うイメージの写真たちが目の前に広がっている。新鮮。仕事は仕事、作品は作品。当然といえば当然か。”写真を撮った本人がシャッターをきったその瞬間、その空間で強く感じたものを、見る側はなかなか掴みとることが出来ない。そこが写真は難しい。”と学生の時、友達に言われた言葉を思いだす。特に思い入れの強い被写体の時の方がより主観的になりがちで、客観的に俯瞰して見ることができなくなる。これは写真に限らずデザインでも言えること。写真と写真の下にそっと置かれたキャプションとを行ったり来たりしながら、読んだことのない小説の一場面を想像してみる。写真だけを見るよりも、そっと添えられた言葉があることで写真にも、武藤さんが空想する文学の世界へも一歩も二歩も踏み込める気がする。あくまで言葉は写真をより豊かにする挿絵的な役割で、丁寧に切り取られたひとつの情景が、気持ちのよい静けさを持ってそこにある。素敵だ。自慢の着物姿で慌ただしそうに来場された方々の相手をしている武藤さんとも、少し言葉を交わし、この作品展や写真に対する熱い気持ちがモワモワっと立ちのぼっているのを感じる。これもまた素敵なことだ。一歩一歩、楽しみながら、自分の選びとったその道をゆく。自分もまたそうありたいと強く思う。
by monday_panda | 2008-11-02 13:03 | art | Comments(2)



イラストレーター栄元太郎のブログ。イラストや写真や言葉。溜まったものを、ぽこぽことアウトプット。
by monday_panda